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執筆者の写真川村 栄作

リハビリテーション(リハビリ)で良く耳にするPT、OT、STって何?




リハビリテーション(以下「リハビリ」)でよく耳にするPT、OT、STですが、それぞれ何を表しているのでしょうか?


PT:理学療法(士)


OT:作業療法(士)


ST:言語聴覚療法(言語聴覚士)


のことを指します。


それぞれ専門性を持ってリハビリを展開していますが、具体的にはどのようなことをするのでしょうか、また、それぞれのリハビリにはどのような違いがあるのでしょうか。


PT、OT、STについて詳しくみていきましょう。


PTとは?どんなリハビリをするの?

PTはPhysical Therapy (フィジカル セラピー)の略で、理学療法及び理学療法士のことです。


理学療法とは、病気やけがなどで身体に障害がある方に対してや、障害の改善のために、運動療法や物理療法を用いて基本的動作(寝返り・起居・起立・歩行)能力の改善・維持を行い、日常生活の自立を目指します。(私も大阪の病院・訪問看護ステーションで10年以上、患者さんの日常を取り戻すお手伝いをさせていただいてきました。)


理学療法士は国家資格で、日常生活に必要な基本的な動作(寝返り・起居・起立・歩行)の獲得を支援する専門職です。


PTがリハビリで行うこと


運動療法

運動療法は、理学療法士自身が患者の身体の問題となっている部分に動きを加えることで改善を促す治療法です。


<関節可動域訓練>

 関節の動きが悪い部分を解剖学的な知見に基づいて動かし、可動域の拡大を図って自発的な動きを促します。

<筋力増強訓練>

 筋力低下がみられる筋肉に対して筋力の向上を促す運動の指導、実施を行います。

<ストレッチ>

 柔軟性を失って硬くなっている筋肉を伸張し、柔軟性を改善して筋肉を働きやすい状態に改善します。

<基本的動作訓練>

 立ち上がる、座る、車椅子からベッドやトイレへの移乗動作、立位保持、歩行、階段昇降などの動作を実際に行い、指導、実施する中で動作の改善を目指します。

<持久性、耐久性の向上>

 動作の持久性、耐久性の向上を目標に長距離、長時間の歩行やエルゴメーター、トレッドミルなどの機器を用いて筋持久力、体力、心肺機能の向上を促します。

<物理療法>

 物理療法とは物理的なエネルギーを使って身体に働きかけ、機能が低下している部分の回復を目指す治療方法です。物理療法には様々な種類があり、それぞれの作用、治療原理を理解したうえで、個人の症状に合った物理療法を選択、実施します。

  <温熱療法>

   痛みのある部位や損傷部位、機能低下を起こしている部位を温めて血流を改善し、

  硬くなっている筋肉、軟部組織の緊張の緩和や組織の修復の促進、痛みの軽減を図りま

  す。精神的なリラックス効果もあります。

  <寒冷療法>

   患部を冷やすことで炎症を鎮め、痛みの緩和を図ります。

  <電気刺激治療>

   電気刺激の大きさ、種類によって低周波、中周波、中周波を交差させて発生する干渉

  波などがあります。筋肉や神経へ電気刺激を与え血流の促進や痛みを緩和する作用など

  があります。

  <超音波治療>

   超音波を当てることで炎症の鎮静やむくみの軽減、血流の改善、筋肉の緊張の緩和な

  どが促されます。

  <牽(けん)引療法>

   頸椎、腰椎を引っ張る機器によって、椎間関節(ついかんかんせつ:頸椎、腰椎のそ

  れぞれの骨と骨の間)の周囲の組織を伸ばすことで筋肉の状態を整えること、血流の改

  善、痛みの緩和を図ります。

  <福祉用具の選定や住環境の整備>

   杖や車椅子、歩行器など、その人に合った福祉用具の選定や調 節、安全に移動、生

  活するために必要な住環境(手すりの設置や家具の配置、動線の確保)を整えます。


PTが働く場所、対象となる疾患

病院、診療所、介護保険関連施設(デイケアや施設、訪問看護センターなど)、保健所、スポーツチームの専属トレーナーなどで活躍しています。


NICUの赤ちゃんから高齢者まで全ての年齢の方が対象となり、骨折・筋や靭帯の損傷・変形性関節症などの整形外科疾患(運動器)、脳卒中(脳梗塞・脳出血など)・脊髄損傷・パーキンソン病(症候群)・脳性麻痺・発達障害などの中枢神経疾患(脳血管疾患等)、廃用症候群(廃用症候群)、慢性閉塞性肺疾患・喘息などの呼吸器疾患(呼吸器)、狭心症・心筋梗塞・弁膜症などの心疾患(心大血管疾患)などが対象となります。


OTとは?どんなリハビリをするの?

OTとは

OTはOccupational Therapy(オキュペーショナル セラピー)の略で、作業療法及び作業療法士のことです。


作業療法は、作業を通して(電話かける・食事の用意・トイレ・入浴・お化粧・リモコンの操作・・・etc・etc)、基本的動作能力、応用的動作能力、社会的適応能力の維持・改善を図り、対象者ごとにその人なりの、その人らしい生活(社会的な背景とか趣味活動など・・・・意味合いが広すぎて、言葉足らずです。すみません^^;)の獲得を目指します。


作業療法士は国家資格であり、日常生活をその人らしい豊かな生活とするために、必要な動作や能力の獲得や、環境を整えることを支援する専門職です。


OTがリハビリで行うこと

<運動療法>

日常生活の動作を獲得するために必要な関節の動きや筋肉の働き、心肺機能、耐久性を改善するために、理学療法士と同じく関節可動域訓練やストレッチ、筋力増強訓練、基本的動作訓練などを行います。


<日常生活動作(ADL※1)、手段的日常生活動作(IADL※2)訓練>

着替える、食事をする、トイレで排泄する、入浴するなど日常生活で必要な動作や、洗濯、掃除、料理、買い物などの家事、交通機関の利用、電話をかける、書類をかく、パソコンの操作、金銭管理、服薬管理などの社会生活に必要な動作を、実際場面を想定して行い、動作獲得のための指導を行います。

※1ADL:activities of daily living

※2IADL:instrumental activities of daily living


<感覚知覚面、認知面へのアプローチ>

人が動作を行うためには、操作する物品がどのような形態、硬さなのか、自分の体がどのように動いているのかという感覚・知覚、認知が脳によって行われることが必要です。(スマホを持つときの力加減は、これまでの経験を元に半自動的に調節されています。)


感覚・知覚・認知によって運動の調節が行われ、適切な動作を行うことに結びついていますが、感覚・知覚、認知に障害があると上手く動作を遂行することができなくなります。


作業や活動を用いて、感覚・知覚を促すための支援や、認知面の改善を行います。


<手指巧緻動作訓練>

ご飯を食べる際のお茶碗や箸の操作、洋服のボタンのとめはずし、鉛筆の操作など、手の細かい動きを獲得するための作業や活動を行います。


<福祉用具の選定や自助具の作成、住環境の整備>

生活をより良くするために必要な福祉用具の選定(ベッド、ポータブルトイレ、歩行器など)や自助具の作成(体に負担をかけずに今ある能力で動作が行なえるように補助する道具)、住環境の整備を行います。


OTが働く場所、対象となる疾患

身体障害分野(中枢神経疾患、整形外科疾患など)、精神障害分野(精神疾患など)、発達期分野(脳性麻痺、発達障害など)、高齢期分野(認知症など)があり、それぞれ病院や診療所、施設、保健所などに就労して活躍しています。


STとは?どんなリハビリをするの?


STはSpeech -Language-Hearing Therapy (スピーチ–ラングウェッジ-ヒアリング セラピー)の略で言語聴覚療法及び言語聴覚士のことです。


言語聴覚士は病気や発達の遅れなどでコミュニケーションや食べること、飲むことに問題がある方に対して話す、聞く、食べることについての検査や評価、訓練、指導を行い、その人らしい生活が実現するように支援する専門職です。


STが行うリハビリ

<言語障害に対するリハビリ>

脳卒中後や脳の損傷後の失語症や記憶障害などの高次脳機能障害の後天的な言語障害や、生まれつきのことばの発達の遅れ、コミュニケーションの障害などの先天的な言語の発達の遅れに対して行うリハビリです。


言葉や文の理解、表現の改善や代変え手段の獲得を行うために、どこが難しいのかということを評価し、一人一人に合わせたプログラムを組み立てて実施します。


<音声障害に対するリハビリ>

 発声や発音が困難な構音障害や、滑らかに話すことが難しい吃音障害に対して行うリハビリです。

 発声、発音の改善を目指して評価、訓練を行います。


<嚥下障害に対するリハビリ>

 食べること、飲むことの障害に対して行うリハビリです。

 食べ物を認識して口へ摂り込み、咀嚼して飲み込むまでの一連の流れが上手く行えるように、口腔器官や食べるための姿勢に関わる筋肉の運動訓練、「ごっくん」と飲み込むための嚥下訓練を行います。


<聴覚障害に対するリハビリ>

 聞こえの障害に対して検査、訓練を行い、ことばの獲得や補聴器の調整などを行います。


STが働く場所、対象となる疾患

病院や施設、学校などで活躍しています。中枢神経疾患や脳の損傷後、小児の発達の遅れ、聴覚障害、認知症などが対象となります。


PT、OT、STの共通点と相違点

PT、OT、STは、生活に支障をきたしている方に対して、その人らしい生活を実現するために訓練、指導、助言、環境設定などを行うという点が共通しています。


 それぞれの最終的な目標は一致し、医師や看護師、ケースワーカー、ケアマネージャー、介護福祉士、臨床心理士など対象となる方を取り巻く医療や福祉の専門職とともにチームとして連携します。


PT、OT、STの相違点は、それぞれ専門的な知識や技術を活かして対象の方へのアプローチを行い、評価の視点やリハビリで用いる手段、アプローチの仕方が異なる点です。


PTは立つ、歩く、起き上がるなど基本的な姿勢と動作の獲得を促し、OTは着替えやトイレでの排泄、入浴など生活に必要な動作や手の動き、知覚・感覚・認知の獲得を促し、STは話すこと、食べることの獲得を促します。


PT・OT・STが全て揃っているというのは珍しいかもしれません。

特に、STはどこへ行っても数が少なく、患者100人以上を2人で受け持つ場合もあります。


すると、当然行き渡らなくなりDrから「STが入っているのに、全然食事の質が上がらない」なんて言われることもあります。


地方の病院では(東京でも規模の小さいところは)PTがOT・STの役割を担うことなんて当たり前にあります。


これからの時代は、リハビリを3種類に分けずに「リハビリ総合職」とする方が良いのではないかなんてことも感じます。


セラピストを目指す人は職域に囚われず、広い視野で困っている人を手助けしてあげてくださいね。

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