患者数が2100万人を超え、糖尿病以上に多くなっている病気。慢性腎臓病(CKD)。
発症すると様々な病気の死亡率が4倍に上昇し、新型コロナをはじめ、ウイルス感染症悪化のリスクも高まる。
さらに人工透析になると一生やめることができない。
人間ドックや健康診断では予兆を捉えることは出来無いのです。
昨今、運動や筋トレが盛んになっています。
その中でプロテインにスポットが当たることが多くなっています。
「筋肉を育てるために栄養となるタンパク質を摂る」一見すると正しいようですが、国の定めたタンパク質の推奨摂取量は男性で60g、女性で50gとされています。
これでも必要量よりも10g多く設定されています。
一般の人が必要とするタンパク質はそもそも少なく、運動したからといって、
あえて「補充する」必要などありません。
大前提として
①筋力増強トレーニングを行ってもタンパク質を摂取する必要はありません。
②タンパク質を摂取しても筋肉が多くつくわけではないし、運動のパフォーマンスが上がるわけでもない。
③タンパク質を取りすぎると腎臓が悪くなる。
特に人工的に作られた粉末やゼリー液状タンパク質(プロテイン)、アミノ酸は避けた方が良いでしょう。
例えそれが牛乳や大豆から作られたものでも、腎臓にかかる負担は変わりません。
実際、腎臓病のリスクを図ることができる尿アルブミン検査の数値がいきなり上昇した方に話を聞くと「スポーツクラブで進められてプロテインを飲み始めた」というケースがありました。
やめていただくことで、数値は元に戻りましたが、もしも飲み続けていたらと思うとゾッとします。
「生化学」という学問があります。
それらの教科書に書かれていることを読めば、不自然なタンパク質を摂ることがどんなリスクに繋がるかがわかります。
例えば肉や魚を口から入れれば、消化する過程でタンパク質は全て「アミノ酸」に変わります。
私たちの体は絶えず作り替えられており、アミノ酸はその材料となるわけです。
運動をする・しないに関係なく私たちの体は絶えず作り替えられています。
どのぐらいかというと1日に約400gのタンパク質が壊され、400gが新しく作られています。その材料はタンパク質が分解されたアミノ酸です。
私たちの体は非常に優秀にできており、常に予備のアミノ酸が蓄えられています。
それがアミノ酸プールというものです。
細胞の内外や血液の中に約100gのアミノ酸が常時貯蔵されているのです。
そうでなければ、補給(食事)をやめた途端に命に関わる状態になるでしょう。
予備のプールがあるからこそ、山の中で遭難して食事ができないとしても、水分さえ補給していれば数日は生きることができるのです。
予備が100gでは少ないと思う方もおられるかもしれませんが、それ以外にももう一つ優秀な点があります。
それは再利用です。
このアミノ酸プールは3つの生成経路と3つの消費経路によって絶えず量が保たれています。
アミノ酸の生成経路
①筋肉や体のタンパク質が分解されることによってもたらされるアミノ酸
②食事から取ったタンパク質由来のアミノ酸
③体の中で作られるアミノ酸
上記①でタンパク質が壊されて得られたアミノ酸が再利用されているのです。
アミノ酸の消費経路
①筋肉や体のタンパク質を合成する
②過剰なアミノ酸は尿素窒素などに変えて尿から排泄する
③ブドウ糖や脂肪を合成する
ここでは②が重要です。
過剰になったアミノ酸は、プールできずに排泄するしかありません。
それには、尿素窒素などに変えて尿から排泄する腎臓の働きが強く必要とされるのです。
そんな状態が続けば腎臓はやがて消耗し、機能が低下していきます。
医学的には「過剰濾過による腎機能障害」となります。
タンパク質を取り過ぎると、腎臓の過剰濾過が生じて腎臓を悪くする。
これは約40年前に証明されています。
さらに、有名な腎臓の教科書「The Kidney」にもしっかり書かれています。
(The Kidney 2020,11th edishon Elseviner,P650,P1775)
腎臓が悪くなったらタンパク質を減らした食事をしなければならないことは医療人であれば常識です。
アミノ酸プールの仕組みによって不足することなどないタンパク質を、プロテインパウダーなどで大量に摂取し、かえって腎臓を悪くしているのです。
もちろん、タンパク質は重要な栄養素ですから、必要量を食事から摂ることは大事です。
しかし、それは普通に食事をしていれば十分です。
もし、不足しているならプロテインではなく、肉や魚・大豆を食べるのが良いでしょう。
では、アスリートやボディビルダーでは有効かということについてですが、これも1994年に決着がついています。
イギリスのダンディー大学の研究者が膨大な研究報告を行なっており明らかに否定されています。
(Proceeding of the Nutrition Society 1994;53:223-240)
そのチームの実験では、男女26人のボディビルダーに対し、体重1キロあたり1.93g(体重60kgで115.8g)という高タンパク食を毎日摂ってもらいました。
しかし、筋肉にはなんの良い効果も出なかったそうです。
反対にイェール大学で行われた実験で、5ヶ月にわたり、アスリートに1日のタンパク質を55gに制限させたところ、筋力は35%も増加したそうです。
こうした結果を見れば「運動するときにタンパク質の補給が必要だ」というのは、
全くのウソということがわかります。
プロテインは「販売上のイメージ戦略」なのです。
メーカー側はなかなかこういうデータは出しません。
そして、なんとなくわかったようなわからない戦略で「体に良さそうだ」と思わせるのです。
スポーツジムのインストラクターが
「運動してブドウ糖が消費されて、エネルギーが足りなくなると、筋肉が使われてしまう。
だから、プロテインでタンパク質を補充しておきましょう」
と言って、そこで販売しているプロテイン製品をお客さんに売っているという話を聞きます。
彼らに悪気はないのでしょう。
しかし生化学から見ればその理論は間違いです。
ブドウ糖がエネルギーとして消費されると次に使われるのは筋肉ではなく脂肪です。
一般的な体格の成人では、約1ヶ月ぐらいはエネルギー不足にならない脂肪を溜め込んでいます。
これらの脂肪を出し切ったとき、最後にやむを得ず、筋肉(タンパク質)がエネルギーとして使われます。
私たちの体には確かにこういうエネルギーの経路があります。
しかし、この経路は脂肪を使い果たした後、最後に命を守るために使われる経路です。
現代のような文明社会で、この経路を使われることはないと言って良いでしょう。
それよりも、プロテインが腎臓に及ぼす害が大きいことを、もっと考えなければなりません。
特に最近はコンビニでもスーパーでもプロテインを売るようになったのは不思議でなりません。
働き盛り以降の年代で、忙しい間を縫って運動をするのは健康を維持するためでしょう。
しかし、体を守るために行なっているはずのことが逆効果にならないようにしなければなりません。
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