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執筆者の写真川村 栄作

「ひざの痛み」にサプリメントは有効?【よくある質問に理学療法士が解説】


最近は体を動かす機会が減ったという方が多いです。


運動量が減ると当然ですが筋肉量も減ります。


すると膝周りを安定させる筋肉も減ることになり、関節の安定性が悪くなり膝の負担が増えて痛みが強くなるという悪循環に陥ります。


「先生〜、あのCMのやつホンマに効くん?一回試してみようと思うねんけど・・・」


実はこの質問、めちゃめちゃ聞かれること多いです。


迷っておられる患者さんには時間をいただき丁寧に説明します。


今回は患者さんから聞かれる質問とその回答に解説を付けて少しまとめてみました。

膝だけでなく肩や腰など関節の痛みに悩まされている方はご一読いただき参考になさってください。


Q1 膝に水が溜まったら抜いたほうが良いのでしょうか?

→A:水を抜くか抜かないかは患者さんの状態(炎症や痛み、生活動作に支障が無いかなど)に応じて主治医が判断します


→解説:ひざに水が溜まった状態を放置しているとひざの曲がりが悪くなるうえ、膝を支える筋肉(大腿四頭筋)が委縮(小さく硬く)してしまうという報告が出ていますので、放置するのは良くありません。



ただ、水を抜くときにはひざに注射針を刺すことから感染のリスクが高まるため、頻繁に抜くのも良くありません


水が溜まっていても生活に困らないという場合は無理に水を抜くことはありません。(普通に痛いですしね^^;)


Q2 そもそも、なんで水が貯まるのでしょうか

→A:関節液の分泌と吸収のバランスが崩れ、過剰分がひざに溜まった状態を「ひざに水が溜まる」といいます。


→解説:関節には関節を覆う袋のようなもの(関節包)があって、その中に関節液が入っています。


関節液はひざの中で分泌と吸収を繰り返しています。

そこになんらかの原因で関節が炎症を起こすとそれを抑えようとして、関節液が多量に分泌され吸収量を上回ると、膝に水が貯まるようになります。


また、変形性膝関節症などの疾患によって軟骨どうしがぶつかり合うことで、そのかけらが関節液に混じったときにも異物を察知し、洗い流すために関節液の分泌が増えることもあります。

膝に水が溜まると、関節内の圧力が高まって関節が不安定になります

そして、関節液に圧迫されて血流が悪くなり、膝の曲げ伸ばしをするたびに痛みが走るようになります。

そのため、膝を動かさないようにすることで筋力が衰えたり、血流がさらに悪くなったりします。

すると、ますます関節が不安定になり、軟骨が破壊されたり炎症が起きたりします。

それを察知して関節液がますます増える、という悪循環に陥る可能性があります。


Q3 『サプリで膝が楽になった』は本当?

→A:サプリが関節を修復する効果はどこにも証明されていません。



→解説:サプリメントを飲用して軟骨ができるとか、痛みが治まってラクになるというのは、医学的には何も証明されていません。

そもそも関節軟骨の中には血管も神経も通っていないので、飲んだサプリメントが食道・胃を通って腸で分解されて体内を巡り、それが関節の中にも入ってきたとして、軟骨にサプリメントの成分が届くとは考えられません。

確かに、グルコサミンやコンドロイチンは軟骨にとって良い成分ではありますが、それが関節の中に入る確率は非常に低い(証明できない)といえます。


ただ、患者さんにとって「これを飲んでいるから大丈夫」という安心感が、プラセボ効果となって実際にひざの調子が良くなったと話す患者さんはいるのです。

(「子供に酔い止めと言ってラムネ渡したら酔わなかった」的な)


今のところはサプリメントを治療に使うことはありませんが、科学的に有効性が明らかになれば、将来的に厚生労働省が薬として認めることとなる可能性はあります。


Q4 『痛み止めで痛み止まったけど治ったのかな?』

→A:「痛みが取れる」=「治った」ではありません。


→解説:膝の痛みは、膝の中で異常が起こっているのを知らせるサインです。

その原因は関節軟骨がすり減ったことなので、痛みを止めても根本的な解決にはなっていません。


そして、今のところ軟骨を再生させる治療は一部病院で行われていますが、患者さんの適応不適応もあり、誰でも行えるわけではありません。


*補足

(再生医療:骨髄刺激法(bone marrow stimulation; BMS)、骨軟骨柱移植術(osteochondral autograft transfer system; OATS)、自家培養軟骨移植術(autologous chondrocyte implantation; ACI)、PRP療法など)

( 厚生労働省のホームページには「これまで有効な治療法のなかった疾患の治療ができるようになるなど、国民の期待が高い一方、新しい医療であることから、安全性を確保しつつ迅速に提供する必要があります。このため、平成26(2014)年11月に『医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律』と併せて、『再生医療等の安全性の確保等に関する法律』を施行し、再生医療等の安全性の確保に関する手続きや細胞培養加工の外部委託のルール等を定めました(一部抜粋)」としています。したがって、再生医療は厚生労働省に届け出が必要となり、認可を受けた医療機関でしか行えない、「高い安全性が確保された治療」となっています。※厚生労働省「再生医療について」)

痛み止めでコントロールする目的は、「痛みでひざを動かさなくなって筋力が低下し、症状が進行してしまう」という悪循環を断ち切るためなのです。


したがって、痛みが取れたら条件(免荷・荷重割合・運動強度など)を整えて膝を動かすようにして膝周囲の筋肉を鍛えるようにしましょう。


筋肉を鍛える方法は、人によって違います

中には「歩けって言われたから毎日最低5000歩目指して歩いています。でも痛みが取れなくって・・」と言う方がおられます。


誤った方法での運動はかえって症状を悪化させる原因になります

必ず専門家の指導を仰いでください。この場合の専門家は理学療法士が最も適しています。


Q5 『手術を勧められました。したほうが良いでしょうか?』

→A:手術を視野に入れながら、他にできることがないか、調べたり、周り(できれば運動の専門家)に相談する。

手術を決めた後にまた迷ったら、主治医にも何回でも時間をとってもらい、相談に乗ってもらう。

人生が変わるかもしれない事柄ですので、納得いくまで相談してください。



→解説:主治医が手術を勧めたということは、『あなたの人生において手術を受けるメリットのが受けずに過ごしていくデメリットよりも多い』と判断したということです。


ここで考えなければならないことは、膝が痛み始めた原因は何なのかということです。


あなたの膝関節が、なんの原因もなく軟骨がすり減り、変形してきたというのは考えにくいです。(老化は原因の一つですが、同じ歳でも何も無い方もおられます。

そこには筋肉のアンバランスが隠されています。


例えば、膝周りの筋肉で内側が弱くなり外側が硬くなると、骨は強い方に引っ張られますので、脚はO脚になります

この状態が1日だけなら大きな問題にはなりません。

ところが、数ヶ月から数年にわたってこの状態が続くと、あなたの膝は徐々に変形していきます。

つまり長年の筋肉のアンバランスが体の歪み・関節の変形の最大の原因になっているのです。(腰や肩も同様です)


その原因(筋肉のアンバランス)に対して、適切な対策を立てなければ、例え手術をして変形がなくなったとしても、あなたの膝には変形させようとする力がかかり続けることになるのです。


手術は「骨の形を整える」方法です。

「筋肉のバランス」は良くなりません。

原因は「骨の形」ではなく「筋肉のアンバランス」です。

手術の選択をする前に、まだできることがあります。


理学療法士やそれに準ずる専門家の運動指導を受け、最大の原因(筋肉のアンバランス)にスポットを当てることが重要だと言うことです。


よくある流れ

①膝が痛んできた

②お薬やサプリ試した

③病院で電気・温熱、自分でウォーキングを試した

④変形が進んで手術を勧められた

⑤手術した

この流れは変えていく必要があると強く感じています。


望ましい流れ

①膝が痛んできた

②自分で筋肉のバランスを整える(自分で無理なら専門家の指導を受ける)

③主治医の指示のもと服薬やリハビリ・物理療法(電気・温熱)を併用する

④膝を大事に使って維持する


この流れに変えることで、手術を回避できる可能性が高くなります。(本当は痛くなる前から自分で調整できるのが一番ですが)


もし、避けることができるなら体に負担の大きい手術は避けたほうが良いでしょう。

そのためにもあなた自身が原因をしっかり把握し、適切な対策を取ることが必要なのです。


当院では、実際に手術を勧められた患者さんが、手術しなくても痛みが取れて持続的に日常生活を送れるようになっている方が何人もおられます。

→補足:

手術を行うメリット

①歩いても膝が痛くない(人工物ですので神経も通っていませんから痛みを感じること)

②膝関節が真っ直ぐになるので、体の歪みが減る(はず)。

③国が定めた期間は保険でリハビリが受けられる


デメリット

①感染症(人工物に血管はないので菌が入っても白血球がたどりつきません=再手術です)

②術後の痛み(切った部分は痛いです^^;)

③左右で足の長さが異なる場合がある(調整可能)

④寝たきりになる可能性がある(リハビリがしっかりしているところは少ないですが・・・。)


人工関節は耐久年数があり、約20〜25年程度となっています。一昔前と比べると劣化による再手術の可能性は低くなっています。

しかし、60代で手術を行った場合は計算上再手術が必要になる可能性があります。80代以降の再手術は体への負担が非常に大きくなります。


他にも、若い頃に怪我をした場合やリウマチなどでは40〜50代で手術を行うこともあり、そうなると高確率で再手術が必要となります。



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